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☆Alice's Review☆

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KANIKAMA「Collection番外編」、Empty Space「Two Policemen二人の警官」__西村博子
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    本多愛也の「白球」、小島屋万助の「止まらない男」、そして二人の「死神」。久しぶりに、目と鼻の距離で見る3本立ては楽しかった。打者、審判、ピッチャー、観客、応援団、そして場外へ飛んだ大ホームランにふと目が止まり、心なごむ夕暮れの町の人々。20数人と聞いた大勢を一つの身体で瞬時に演じ分けていく「白球」と、食欲止まらず、初め山盛りの納豆ご飯から家中の食べられるものは全部食べつくし、終いにはトイレットペーパーや金魚まで、どんどん加速するスピードで食べていってしまう「止まらない男」。それぞれのキャラクターにぴったりだし、どちらにも、そこはかとないペーソスが底に流れていて、見る者の頬は思わずほころぶ。西洋パントマイムの型でなく私たちの日常の動きが基になっているのが、親近感の所以だろう。

     「死神」は、小島屋万助の、すぐ脱げてしまいそうな背広の頼りなさそうなサラリーマンが自殺しようとしてどうしても死ねないのを、本多愛也の死神――ちょっと髪を逆立て、裾ひらひらする短かコートを羽織っただけ。ありきたりの死神の扮装でなく、そこらへんに居そうなのがいい――が、ついにその死を見届けるまで。これは前2作と違って、もうちょっと時間が長く流れ、気持ちが多様に変化した。サラリーマンは飛び降り自殺しようとして出来ず、首吊ろうとして果たせず、死神の一生懸命のサポートにも関わらず、煙草を一服などと一寸逃れ。果ては命が惜しくなって逃げまくり、とうとう天?の定めの時刻に間に合わない。死神は諦めるしか仕方なく、踝(くびす)を返す。するとなぜか、サラリーマンは死神を追っかける。死神はもう遅いと拒む。と、突然の交通事故、サラリーマンはもんどり打つ。やれやれやっとと死神は、書面にサラリーマンの拇印をもらい、帰ろうとする。が、まだサラリーマンは虫の息。死神は頭をレンガ?で殴りつけ、ようやく役目を終えて帰途に着くというもの。息合った二人の、細部にまで工夫凝らされた連続技は、マイムの楽しさを存分に味わわせてくれた。

     おそらくKANIKAMAコンビの代表作、少なくともその一つと言っていいのだろう。何ひとつ文句はない。が、もしこの「死神」。その冒頭。遥か遠くにビル群が見え、死神たちを率いる大神が大きな蝙蝠みたいな黒い羽をぱたぱた、その大都会の上空を覆いつくすシーンが映されたら?と想像が飛んだ。演劇好きの悪癖かも?だが、サラリーマンの死をただ笑って見ているだけでなく、自分の可能性として感じられたかも?と。

     Empty Spaceの「二人の警官」は、上とは対照的にプロットのあるマイム劇だった。わが子を背負ったベテランと配下の新米刑事。同じくわが子可愛さにベビー用品ばかり盗む泥棒たち。それぞれペアの二組が、あるサラリーマンの家に盗みに入り、捜査に行く。ところがそのサラリーマン、生活苦からか自殺していて、赤子は泥棒たちに連れ去られる。追いつ追われつが始まり、ついに警官たちは泥棒たちを追いつめる。が、ベテラン刑事は泥棒たちに手錠をかけよう、として躊躇し、せめてもの任意同行とする。場面は一転、エプロン姿のベテラン刑事が赤ちゃんのための食事作りにいそしんでいるところへ新米が訪れて来る。おそらくベテランは泥棒たちの赤ちゃんも引き取ったのだろう、沢山の赤ちゃんを新米があやし始める――というところで終る。笑いのうちに、自分の子だけ可愛いかった刑事が泥棒たちに出会うことによって他の子たちも可愛くなり、新米刑事もまた変わっていくという、人間の変化(ドラマ)を内包した作品だった。

     

    作・演出、ベテラン刑事も演じた金星然から聞いた話だが、韓国では今、子どもを外国留学させ妻もそれに同行。男はせっせと稼いで仕送りするのが流行というか憧れというかモデル家族だという。そういう、男がお乳を飲ませたりオムツを変えたりなどとんでもない社会では、追う刑事と追われる泥棒がともに赤ちゃんの倏愽蕕せ辧覆靴腓い粥豊畛僂箸いΕープニングは、もうそれだけで爆笑ものだったに違いない。が、最近のイケメンならぬイク(育)メン流行り、大企業や官庁では男の育児休業が奨励さえされるようになった日本では、そうはいかなかった。その点、ソンした。惜しかった。

    ベテラン刑事がどこで変わったか。先輩に違和感持っていたはずの新米刑事がどう変わっていったか。言い換えれば、自分への愛、自分の子への愛が、いつ他への愛につながったか、変わり目がマイムとしてあまり鮮明でなかったのも残念だった。が、自殺したサラリーマンの部屋へ行ったベテランが、吊ってあったメリー玩具の優しいメロディに、つい、捜査より背中の子をあやすのに夢中になったり、天井高く放り上げたりしてしまうところ。韓国でいま大流行のゲーム「ザウルス」「バブル、バブル」からと聞いたが、海中を泡を吹きながらスロー・モーションで追いかけごっこしたり、ピンク兎ちゃん?被って泥棒も警官も一緒に踊りまくってしまうところなど、面白いシーンも沢山あった。舞台に泣き声や笑い声以外赤ちゃんを一切出さなかったのも、言葉のない劇として当然といえば当然だが、いい。さらに技術を練り上げれば、さらに面白い舞台になること請け合いである。

    今回の日韓競演KANIKAMA、Empty Spaceを初め、上海太郎(大阪)の「Wanted指名手配」その他、ムスタヒール劇団(バグダッド)の「アブグレイブ刑務所」その他、そして上海戯劇学院の「三生石」やDos à Deux(フランス)の「Saudade, terres d'eau水の地サウダーデ」等。これまでに、決して多くはないが、黙劇ないしセノグラフィ演劇を見る機会を得て、そのたびに劇とは何か、言葉とは何か、言葉を使わない劇の良さはどこにあるか、考える機会に恵まれたことに感謝したい。(2010.1.28/30所見)

    | 劇評 | 05:13 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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