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タッタタ探検組合「俺んちに神様!?」 西村博子
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     俳優になりたいと実家から出てきて、しかし今はコンビニだったかな?の店長してるという青年が、医者から脳腫瘍、余命わずかと宣告されるプロローグから、誤診だったと言われるエピローグまで。その下宿に七福神が入り込んできて、座敷わらしや河童や幽霊や……ここまで話したら聞いていた若い女性が、声出して笑った。そっかあ、なぜ貧乏神でなく 七福神? ここ東北だっけ? 河童が青年から尻こ玉を引っこ抜いたのをきっかけに青年は元気になったようだけど、あの、お尻から取れたものは青年の何にあたる? ……など、結構引っかかりながら見ていた私は、そんなこと考えてちゃいけなかったのだと思った。そもそもこの「俺んちに神様!?」(岡田茂作)、題名から!?がついてたじゃないかと。思いがけないことが思いがけなく起こることこそ、この作品の狙い。青年にとって死そのものはあまり問題でなさそうだったのも意図された意外の一つだったと考えるべきかも、と。

     実際、次々青年の下宿に転がり込んで来る七福神は、死を宣告されたものの神頼み、夢か現つか出現してくる神々などでは全く無く、大神様から電話で、出雲の、年に一度の神々の集いにさえ来なくていいと言われるほどの役立たずたち、ごろごろしたりお喋りしたりただの居候だったし、青年の俳優志望も、心遣いの宅急便届けてくれる母親に諦めたとは言えないと言うので、演劇することの厳しさを想ったら、これまた、なりたかったのは赤レンジャーだったと肩すかしを喰う。もちろん店長という今の仕事に何か青年の思いがあるというわけでもない。

     宣告された死より、舞台の彼のいちばんの問題は女友達だった。幕明く前にすでに彼女に大金を用立てていた青年が、またまた要ると頼まれるのだ。前の、資格試験を受けるからと頼まれたお金は美容整形に使われてしまっていたし、みすみす今度も同じことになりそう。前の借金どう返し、今度どう調達する?である。

     しかししかし、その借金問題さえ、終わり近く、青年が河童に尻こ玉を抜かれたあとだが、なぜかやくざがローン取立てを断念してくれて、いともあっさり解消してしまったようだ。彼女も谷口神様に諭されて金の無心は以後止める、らしい。

     意外!意外?によってただ笑いをとろうとしたかに見えるこの作品、ひょっとして現代の若者が描かれる?の期待は外されたけれども、しかし、何が起こっても不思議でない空間作るに、誤診という設定は巧みだった。誤診によって普通なら死後に想いを馳せそうだが、そうでなく、現実のほうに想像を広げたのも秀逸だった。

     

     意外の笑いが特徴のこの作品、誘われて私もひとことお笑いを言うと、もう一人の神様(谷口有、演出も)である。この神様は青年の留守中、七福神より先に下宿に入り込んで来ていたのだが、その神様の名を青年は、語呂が近くてしょっちゅう男性シンボルと呼び間違えていた。クスリと笑える箇所である。しかし呼び名のクスリだけじゃ勿体ない。いっそほんとに男性シンボルだったら?と思った。爆笑だったかも。

     真面目に戻っていうと、終わりのほうでこの神様、青年には赤レンジャーのように人の助けになる仕事をするように、女性には嘘をつかず生きろといったようなことを真面目に、実に誠実に忠告した。が、そもそもこの神様、七福神同様、大神様から出雲に来なくていいと断わられた役立たずのひとり。その忠告が役に立つはずがない。が、再び、がだが、そのあまりの真摯に、青年も女性も忠告を聞き入れた。見ているものも襟を正した。それは神様役というより、まるで演出家のようだった。人生の先輩、といったほうがぴったりかな。ついつい芝居を離れ、谷口有さんその人の誠実さというか、愛が伝わってきてしまった。

      語呂合わせやつまんないギャグによる上っ面の笑いはTVに充満しているが、ほんとの、心からの笑いは滅多にない。笑いは難しい。とくに喜劇は、同化の好きな日本において難しい。今回の「俺んちに神様!?」、青年をどう笑うかという本筋で決して成功したとは言えないけれども、タッタタ探検組合が何を志向したかは鮮明だった。そう言えばこれまでのタッタタ探検組合だってそうだったじゃないと言わなければならないけれども、今回はさらにはっきり打ち出されたと思う。困難な道だが今後も、日本の「喜劇」をタッタタ追求していってもらえたら……と願わずにはいられない。

     もう一つ、今回の舞台に鮮明に表われたことは、演出の、一人ひとりの俳優へのこだわり、とくに俳優の体へのこだわりだった。七福神たちがみんなで踊るダンスや、スローモーションで飛ぶ弾に体を一人ずつ抱えた両サイドが争うなど面白い場面は見やすい例だが、そういう大勢の場面だけでなく、ちょっと出る俳優のたとえば足の運び方、頭巾の下の顔の伏せ方等々、あらゆるところに演出の細やかな目が届いていた。以前なら、体の動く俳優が精一杯動いて残りはその他大勢、ひとまとめといった感じが見受けられないではなかったが、今回は違って、一人ひとりにこだわり、その人ならではの魅力を、笑いを引き出そうと全力投球されていた。ここからも谷口有の演劇への愛が伝わってきた。(2011.11.23)

     

     

    | 劇評 | 10:59 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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