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☆Alice's Review☆

  タイニイアリスで上演された作品の劇評たち ―Crazy Tea Party―
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    1.個人的に演出家の個性が現れている作品より、演出家は主題を投げるだけで俳優が作る舞台の方が好みである。その意味で「バスドライバー」という作品(古川大輔作・演出)は私の好みの演劇であった

    バスという限定された空間の中にいて指定されたコースしか回らない運転手、聡は金髪の美女を乗せてどこかにいくという一種の逸脱を夢見るが、それはあくまでも夢にすぎない。聡はまわりの人達からは人柄のいい人と思われているが、母親との関係は、兄貴である守が死んだのち悪くなる一方だった。その母親が彼の脳裏に浮かぶ=何年も会っていなかった母親がバスに乗りこんでくる。が、話は上手く進まず、またもやケンカとなってお互いに理解できないことを確認するだけで終わるのだった。最後に、死んだ兄貴が花を持ち、バスに乗ってくる。その兄貴と話して聡は母親の本音を知ることが出来、指定されたコースを離れて母親のところに向かって大きく方向転換していく――というのがこの作品の大筋であった

     

    2.人は誰でもコンプレックスを持っているものである。そのコンプレックスはどんなものであれ、必ずその人の性格や人間関係に影響を及ぼす。聡が母親とコミュニケーションが上手くとれなかったのは兄貴に対するコンプレックスのせいではなかっただろうかと思う。聡は兄貴のお墓によく行っていた。兄貴のことを懐かしがるのは、聡の心のなかに兄貴に対するコンプレックスがあったからに違いない。それが聡に働きかけ、妙な嫉妬心が生じ、母の態度が嫌いになったのかもしれない

    コンプレックスというものはその持ち主にでなく他に向かって発散される場合だってあるのだ。聡の、兄貴である守に対する感情は、弟ならではの兄に対して持つ尊敬やコンプレックスなど複雑なものであったのだろう。しかし最後に、死んだ兄との対話によって聡は、兄貴に対するコンプレックスを乗越え、母に対する誤解も解けることになる。(だが、この部分は、理解するのに少し流れが足りなかった気がする。)

     

    3.ほかに、成長というキーワードも観客に投げ込まれてきた。金髪の美女をバスに乗せて旅に行きたいという彼の夢からも知れるように、聡は逸脱を夢見ているが、しかしそれはあくまでも夢であり、実現できるとは思っているわけではない。聡は、思い出のなかの、片思いの相手であったキム・ヒエンにも積極的に行動しようとはしなかったのだから、勇気を出して自分に告白してくれた千恵美と似ているようで似ていないと見ていい。しかし聡は、兄貴と話した後、決められたコースを外れて母へと向かっていった。逸脱をしたのである。その行為は聡が自分で作った枠、限界を超えたということであり、自分に対し少しは堂々となり、周りから、自分から自由になったということに違いない。聡の成長である。しかし、それが兄貴の助言を受けてであったことを思うと、聡はまだまだ、兄貴の影響強く、そのコンプレックスから完全に自由になったとは言い切れないようだ

     

    4.時間がどのように過ぎていったかわからないぐらい面白い作品であった。椅子を並べただけの舞台や周囲をそぎとった照明も劇に集中するのに役立った。平凡な人達の日常会話からでてくる自然なユーモアも雰囲気を軽くし、集中力を失わないようにしてくれた。ひとつ残念だったのは、聡の初恋の相手であるキム・ヒエンが初恋の相手らしい魅力を見せることなく、日本語の発音を意識することだけに集中していたように見えたこと。少々物足りなかった

     私たちは他人と関係を結ぶ。その中で最初に結びつくのが家族である。しかし、家族と上手くコミュニケーションがとれないひとも少なくない。素直に自分を見せ、頼ればどうなんだろう。話さない、表現しないでいて相手が自分のことを分かってくれるとはどう考えても無理な話ではないだろうか。聡が兄貴と話したように話し合いたいものである
    | 劇評 | 07:17 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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