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☆Alice's Review☆

  タイニイアリスで上演された作品の劇評たち ―Crazy Tea Party―
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モズ企画 韓国新人劇作家シリーズ第一弾__森 薫
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    ソウル新聞や釜山日報の新人戯曲賞を受賞したジョン・ソジョン作「秋雨」、オ・セヒョク作「パパのパパごっこ」、イ・ナニョン作「一級品人間」を見た。
     同日連続公演で3作を一挙に見ることができ、最近の日本の若い作家がともすれば忘れがちな、自分の生きている社会に対する目がそれぞれの作品の底にしっかりと在ったのに先ず感心した。3作を通して、韓国社会も日本と似ているなあと改めて思ったのも収穫だった。
     なかでも一番面白かったのは「パパのパパごっこ」(荒川貴代演出)だった。会社を解雇された夫たちがそのことを如何にして家族に知らせず毎日出勤のふりができるか。夫が首になったことは百も承知の妻たちが、知っているとはどうやって夫に知らせずにおけるか。失業者のいわば先輩と後輩、それぞれの妻たちが公園で出会い、夫は夫同士、妻は妻同士でそのためのテクニックを授けたりレッスンに励んだりするという、笑ってはすまされないけど笑わずにはいられない、愉快な劇であった。
      今回の舞台より前のことだが、たまたま大阪で、確か作者が演出もした同じ作品を見た記憶があるのだが、そのときは韓国語の字幕つきだったせいもあったかも知れないが、クスリとも笑えなかった。サブロク敷いてお馬さんだったか子供の遊び乗り物なども置いて公園らしく見せ、主として正面後方で演ずる夫たちと、下手前方が多かった妻たちとが交互のシーンを、今思えばいやに真面目に、会話を交わしていた。
     しかし今度は久保庭尚子と坂本容志枝二人の早変わり。瞬時に夫たちは妻たちとなり妻たちは夫たちとなって動きもたっぷり。ばかりでなく、教える側と教えられる側との立場も男女入れ替わると同時に逆転。その男女と立場逆転が一度でなく何度もだったので、これがたまたまある家庭、ある夫妻に起こった出来事でなく、誰にでも起こりうる、いわば可能性として伝わってきたのがとても良かった。作者にとっても、こういう立ち上げ方もあったかの発見であったに違いない。

     「秋雨」(金世一演出)はこの公演の前にミリャン国際演劇祭で同じ金世一演出の舞台を見たのだが、それとはまるで違う舞台になっていたようだった。そのときは、貧しく売春するしかない娘と母が客に殺され、その境遇から救い出したかった父親もすぐ目の前の公園近くで人知れず事故死する。そして、そんな惨事にまるで関わりなく公園では恋人同士が愛を語り合い、傘をさしたサラリーマンたちの家路を急ぐ姿が交錯するというもの。公園といえばふつう、市民の憩いの場と思いこんでいたのが、それは秋の、冷たい無関心の雨がひたひたと伝わってくるところであった。秋雨はまるで、毎日のように身近に起こるいじめも路上殺人も強姦も、極端を言えば大震災も原発事故も知らん顔の私たち、日本社会の良き市民たちのような冷たさだった。短編だったが、創り手たちの無言の想いが、哀しみが、詩情豊かに伝わってきて心に響いた。
     が、今回はまるで違う舞台になっていた。ミリャンでの公演が終わってから作者のジョン・ソジョンが作品に手を加えたと聞いたし、おそらく演出も、その改作に忠実であろうと努めたに違いないが、いちばん大きな違いは、売春ホテルの場。たとえば事後の客がメタボの腹を丸出しにしたり支払いを値切ったり。そのため、体を売る娘や商売できない年になって精力剤を売ろうとする母親の哀しみなどより、ついつい客のミゴト!な腹のほうに目が奪われてしまったりした。舞台も全体的によりリアルになったように思われる。
     公園の恋人たちはそのまま体を売る娘と従業員となり、ホテルでの事件が終わるとまた公演のカップルに戻ったが、あれはなぜだったのだろう。最後、登場人物たちが亡くなった人も買った客も傘をさして通り過ぎていた人たちもすべて、だんだん舞台に集まってきて大団円?で終わったが、あれも何を伝えたかったのか?首をかしげた。
     この「秋雨」、もうじきソウルのゲリラ劇場で公演すると聞いた。今回はその、通り過ぎてみなければわからない、一つのいわば過程と私には思われる。ソウルに向けて日韓力を合わせ、さらに練り上げていってもらえるものと私は信じている。

      最後の「一級品人間」(鈴木アツト演出)。息子を出世させたいばかりに、夫の臓器を売っては次々により優れた脳を手に入れ、移植を重ねる妻が居る一家。その居間が舞台。いかにも人の良さそうな夫は次第しだいに体の具合を悪くしていき、ついには骸骨になり、生きてる姿そのままの(たぶん)亡霊になり、息子も初めの音楽好きから、手術を重ねるごとに社会適合型人間へと変わっていく、これまた大笑いで見ながらどこかでシンとなる(はずの)作品だった。2010年に来日したEmpty Spaceの「Two policemen 」。赤ちゃん用品ばかり盗みまわる泥棒たちを赤子を背負いながら追いかける警官を身体表現で描く面白い作品だったが、その作・演出の金星然さんから、韓国でもっとも模範とされる良い夫とは息子を妻をつけて海外へ留学させ、せっせと送金するひと。イクメンなんてダメダメと聞いて、へーえ、なるほどねえと感心したことがあるが、今度の「一級品人間」は妻のほうが主導権を握り、それも望みを最先端手術で叶ええようというのだから、さすがオモニの国。韓国でもグローバル社会の経済競争は日本と同じ、ここまで深化したかと面白かった。
     けれども正直言って、舞台はさほど我がごととして身に沁みなかった。作品の大筋やテーマは分かったし、骸骨の作りも丁寧だったし、とくに被害者のひとり、気弱で善意の夫の控えめな巧い演技は好感が持てたのに、残念である。
      理由はなぜか、考えてみたがよくわからない。おそらく演出の目線が妻の側にあり妻に肯定的で、妻の演技に最も力が注がれたから、ではなかったかと今は思っている。たとえばもし、手術が済むごとに人格が(おそらく服装も態度も)ガラリガラリと変わる息子がもっと明瞭で、その各場の三人の関係、立ち位置や座り場所、もの言いなどもガラリガラリと変わったとしたらどうだったろう?などと想像が飛んだ。冒頭聞こえてきた息子の歌声ももっともっとたっぷり、うっとりするほど魅力的だったらどうだったろう。それなら、どうせタイニイアリスの客席にいる多くは親の反対押し切って演劇見たりしたりしているのだから、息子と息子を変えていく母親に対して今とは違った感情が持てたのではなかったろうか、と。今のままだと、観ているものも、母親の言うことが正しい。息子に対して芸術なんてやめちまって、もっと金の稼げる仕事についたほうが身のためと母親と同じ考えを持ってしまいかねないからである。

     日韓の演劇交流が始まってすでに四半世紀。どちらかと言うとこれまでは、社会的地位のある有名作家や演出家、有名劇団との交流、紹介が主だったと思うが、時代は変わり、これからはそろそろ、技法を含めての作品のよしあしや同時代性が先ず問題になってくるのではないだろうか。今回の犂攅饋型遊犧邁肇轡蝓璽座莪戝騰瓩蓮△修Δい時代の到来を告げる最も早い現れの一つに違いない。

     モズ企画は、秋になると朝鮮半島と日本列島を定期的に行き来する百舌鳥から名づけられたと聞いたが、ぜひ第二弾、第三弾と韓国の同時代を伝え続けて欲しいものと心から願っている。それも単なる紹介ではなく、今回の第一弾のように創造競争として続けていって欲しい。私たちは今回の新鮮3作品によって韓国について以前より知ることが増したし、私たち自身を振り返ることもできた。第二弾、第三弾……はおそらくそれだけでなく、回を重ねるにつれて段々と作品は? 演出は? 俳優は? その受け取り方は?とお互いを知る競争、刺激のし合いへと深まっていくに違いない。 (2013.10.21所見)
    | 劇評 | 17:32 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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