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☆Alice's Review☆

  タイニイアリスで上演された作品の劇評たち ―Crazy Tea Party―
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三一路倉庫劇場 ミュージカル「 結婚」__長谷川 明(ハンダラ)
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     韓国でロングランが続いている傑作ミュージカルと聞いていたが、その理由が納得できる作品である。シナリオは、現代韓国が抱える表層主義、IMFによる韓国経済介入以降、益々拡大した貧富の格差、その結果の拝金主義的傾向や玉の輿に乗る為なら美容整形、脂肪吸引など何でもござれの美人指向など現在韓国の抱える現実の問題をキチンと押さえ、パロディー化してからかいながらも決して人間を人間として見る視点を失わぬ劇作家の、極めて優れたシナリオに、無駄の一切ない舞台美術と、合理的で応用力に富む、様々な仕掛け、執事・マネージャー役の年輪を感じさせる燻銀のような演技に呼応する主人公カップルを演じた、男優、女優の高い技術、演出家自身による楽器の生演奏も粋で技術的に非常に高いものであった。
     更に、朝鮮半島に長く伝わるマダン劇の伝統を踏まえてのことだろう。舞台と客席を一体化させる自然で、共感を持たせる引き込み方も抜群である。
     このような、準備を済ませた上で、経済合理主義の齎した軽薄さの底に流れる、寂しさ、虚無感が、何を奪い、何を残すのかが、見えてくる仕掛けだ。この辺り、エンターテイメントとしての提示の仕方も見事である。
     
     以上の顛末を若い詐欺師と化した元実業家が企てた結婚詐欺を通して描こうとした作品と言えよう。
     主人公を務める、若い男は、ベンチャーを起業し一時大成功を収めた。然し、人の世の移り変わりは激しく、順調だった事業は、一旦狂い出すとあっと言う間もなく資金繰りが破綻、倒産に追い込まれてしまった。男は、それでも超のつく楽観主義者で、最後の金をかき集め、庭付き、執事付き、ピアニスト付きの物件を借りてインセンティブを齎すエンジェル探索に乗り出す。無論、エンジェルは、ベンチャーへの出資者ではない。若く美しい女性である。当然のことながら、ネットを利用して、婚活をする。最後の金で借りることができたのは、先に述べた人、物と、スーツ、ブランド物のライター、シャツ、腕時計、指輪、ネクタイ、靴など。総て時間貸しである。建築など先に上げた物・人については、80分。おまけが20秒。小物は、オプションで、ものによって返還するタイミングが異なる。何れにせよ、契約は厳正なもので、執事の振りをして、マネージャーが、クライアントの監視をしつつ、時間になると貸したものを取り上げてゆくスタイルだ。この辺り、資本主義の冷徹を表していると取ることも可能だろう。
     一方、ここでレンタルされているものは実に豪華である。シャガールが、最初の妻の為に描き、生涯、手元に置いて放さなかったという100号を超える絵画、皮張りの豪勢な応接セット、金側にダイヤをあしらったライター、ブランド物の腕時計、ネクタイ、ハンカチーフ、ベルト、スーツにシャツ、豪勢な指輪、おまけに庭はサファリパークになっており、ライオン迄飼われているのだ。使える時間は80分、おまけが20秒だ。然し、女は、20分を過ぎても来ない。残りの全財産をハタイて借りたのに、時間はどんどん過ぎ、而も、目当ての女は来ない。男は、焦ったり焦れたりもするが、そこは、超のつく楽天家、安く見られないよう、初めて逢う時、女は10分程度は遅れて来るもの、遅れて来る女程、良い女に違いない、と高を括っている。
     暫くして女は現れた。予想に違わぬ美人、スタイルも良いとあって見た目は理想である。問題は、実際に性格や考えが合うかどうかだが。初めて会う二人には、互いに相手を信じて良いのか否かも分からない。そこで、腹の探り合いとなるが。近頃の流行では、美人でスタイルが良くなければ、到底玉の輿には乗れない為、整形手術や脂肪吸引など美容サービスを利用する女性ばかりで単に美しいだけでは信用できない。一方、結婚相手の男は金が無ければ肘鉄というのが、トレンドである。
     また、時間が来れば、借りた物は回収されてしまう。最初は、ライターが遣られた。見せびらかそうと煙草に火をつけようとした矢先である。次にはネクタイが、といった具合に小物から、身につけている物まで、順々に取り上げられてしまうのだが、男はその度に、苦しい嘘をついて何とか取り繕う。庭へ出て、サファリパークその物を実地検分させたり、ライオンを見せたり。而も、女は、ライオンに対し、犬にでもしてやるように手をさしだしたりして男をひやひやさせるのだ。
     部屋へ戻ると、執事の振りはしつつも、マネージャーによる回収が再び始まる。男は女を口説きに掛かるが、興が乗ってくる度に、腰を折られる。然し、男も只、剥ぎ取られているだけではない。一つ一つ身につけている物を剥ぎ取られて行く度に、男は己の心を裸にしてゆくことを覚え、終には下着だけになったが、己の裸心を女に見せることに成功。女も心を許し、生まれて初めて、自らの本当の身の上話をし始める。自分の綽名が“おまけ”だということ。自分の失踪した父のこと、母は、おいてけぼりを喰らって自分を産んだこと。父は、詐欺師で母を妊娠させ、自分という“おまけ”を残して失踪したのが、綽名の由来であること、そのことを思い出すと何となく安心すること等々。
     男は、彼女の父は、自分と同じような人間だったことに気付かされてギクリとするが、彼女がそんな父の思い出で安心することで安堵する。二人は、世間の常識とは異なり、詐欺(・・)という共通項を通じて、互いを確認し、生涯を通じて互いを信じ、愛し、共に在ることの意味に気付いてゆく。
     タイムリミットが迫る、時は来た。執事役は、男にメモを渡す。そこには、こう書かれていた。“行け”と。男は、おまけの20秒を使わせてくれるように頼み、ネクタイを取り上げられた後に、客席から、貸して貰ったタイを、どのように扱い、どのように返したかを客を証人に立てて証明しようとする、その上で、彼に証人になってもらってプロポーズ。
    幕  (2013.8.17 15:00〜 タイニイアリス)
    | 劇評 | 09:43 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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