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☆Alice's Review☆

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Tama+project「Hamlets」............佐々木 久善
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    ーハムレッツ 足し算ではない何かー

     「ハムレッツって何だ?」シェイクスピアの戯曲?その戯曲の主人公?あるいはモデルにされた実在の人物?どれも本当で、しかし、どれも足りない。
    ハムレットが複数形でハムレッツ。単純な公式。しかし単純なものには罠がある。
     ハムレットにJR仙石線の駅名は出てこない。しかしハムレッツ(江戸馨訳/丹下一構成・演出)には出てくる。その違いは何だ。「1+1=2」の場合、「1」にないものは「2」にもない。だから単純に「ハムレッツ=ハムレット+ハムレット+…」ではない。
     ハムレットはシェイクスピアの「ハムレット」の主人公。その他にお母さんとかお母さんの夫(これが今の王様)とか婚約者のオフィーリアとか墓掘り人とか、いろいろと出てくる。でも、みんなハムレットに似ている。
     ハムレットの天敵であるお母さんの夫なんて自分の悪事を神様に懺悔したりするし、それを殺そうと狙っていたはずのハムレットは、懺悔をした後に殺しても天国に行ってしまうという理由で千載一遇のチャンスを棒に振る。
     単純ではなくて、かといって複雑というほどでもなく、悪くもなく、善くもなく、冷静でもなく、感情的でもなく、中途半端なところを、フラフラと揺れ動いている。その揺れ動く様が「ハムレット」なのではないか、と思った。
     だから、私もハムレット、あなたもハムレット。あいつもハムレットで、こいつもハムレット。「チーム・ハムレット」で「ハムレッツ」。「ハムレットであった私たち」ということなのかもしれない。
     3人のハムレットと3人のオフィーリア。「3」という数にも意味がありそうだ。
     平成23年3月11日、東日本大震災とその後に発生した津波は東北の太平洋沿岸に大きな爪痕を残した。JR仙石線もその被害を受け、現在も不通区間が残っている。1人のオフィーリアが仙石線を各駅停車のように駅名を辿って旅をすると、現在も続く、不通区間で先に進めなくなってしまう。単純な遊びのようなのに、不思議に悲しみを覚えてしまう。そしてオフィーリアの墓穴を彫る墓掘り人が笑い話として話す「オフィーリアは水に落ちたのではなく、水がオフィーリアに向かっていった」という台詞。まさに津波のことではないか。
     3月11日を知らなければ、笑い話にしかならないような奇妙な世界を私たちは生きている。
     舞台は、装置が何もない素舞台。そこに役者が立ち、コントラバスの生演奏が加わり、壁面に映像が映し出される。それが「ハムレッツ」の世界。それは、シェイクスピアの戯曲であれば大詰のハムレットとレアティーズの剣の試合の場面。つまり終りから始まる。安部公房「終りし道の標べに」には「終わった所から始めた旅に、終わりはない。」と書かれている。「ハムレッツ」も同様に3月11日という、いくつもの終りから始まった旅なのだろう。
     舞台の上でハムレットは次第に増殖してゆく。それは、かつて別の名前で呼ばれていた人物かもしれない、それが揺れ動く「ハムレットたち」になって、舞台は終る。しかしそれは「終り」ではなく、舞台から観客ひとりひとりに手渡されたということに過ぎない。「ハムレッツ」に終りはない。その先を「生きて」と観る者に迫っている。

    出演:茅根利安(仙台:ココロノキンセンアワー)、丹下 一、絵永けい(仙台:OCT/PASS)、野田貴子(横浜)+橋本識帆(石巻)
    作曲・演奏):水野俊介(五絃ウッドベース)
    映像:ヒグマ春夫
    | 劇評 | 03:40 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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