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☆Alice's Review☆

  タイニイアリスで上演された作品の劇評たち ―Crazy Tea Party―
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鳳劇団「わすれな草をあなたに」__小笠原幸介
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     会場に入るとなんとも能天気な昭和歌謡が流れている。その雰囲気と以前の作品『昭和元禄桃尻姉妹』の評判から、ドタバタ喜劇のようなものを勝手にイメージしてしまっていたのだったが、実際観てみると全然違う印象だ。もちろんドタバタも笑いの要素も芝居の中にはある。しかし意識してコテコテの笑いを狙っている訳でも、客に媚びているような態度も一切なく、俳優達の立ち振る舞いも含めて、なんというかとても品のある舞台なのだ。
     芝居はごくストレートな3人芝居だ。原稿用紙に向かい小説を書こうとしている初老の男。その物語はある突然の雨の日、男が自分の傘を貸してあげた若く美しい女の話。それが自分が実際体験した記憶なのか、空想の世界の物語なのか分からないまま男は「幻の女」の影を追いながら妻との生活を送る。妻には夫が痴ほうでボケてしまったとしか思えない。幻の美女を演じていた女優は一転ハイテンションな看護婦に変身、治療と称して男と噛み合ないトークを繰り広げる…。飾りっけのない芝居。私自身はあまりこのような芝居らしいお芝居、というのを普段あまり観ないのだが、このある意味地味ともいえる会話劇の「普通さ」に逆に惹きつけられてしまった。でも、その普通さの中にさりげなく演出は利いている。特に病院でのドタバタ治療を終え、夫婦二人での会話シーン。妻が昔行った旅行の思い出を懐かしそうに語り出す。しかし、最後に男がそれまでのなごやかな雰囲気を一変させる一言を妻に語る。『─どちら様でしたか?』。この一言で芝居は終わるのだが、この一言の切れ味はすごいと思った。楽しい芝居だと思っていたら突然、これは怖い話になった。何か大仕掛けの装置があるわけでもない、ドラマチックな展開があるわけではないのだが、このたった一言の台詞がこれだけ力を発揮するとは、非常に驚きだった。恐らくこれは会話劇というものが持っている、大きな魅力のひとつなのだろう。会話劇にあまり馴染みの無い私にもそれは伝わって来た。

     また、全体を通じて感覚全体に訴えかける工夫がしてあったのも演出の一つの特色かもしれない。例えば男がふかすパイプ煙草の匂いが会場を包み込む。男が一人でパイプをふかしながら原稿を書くシーンはかなり意図的に長くしてあったのではないかと思う。匂いで言うなら、「夏」を感じさせる蚊取り線香の匂いもずいぶん使われていたようだ。匂いだけでなく味覚でいうと、男がそうめんを食べるシーンも印象的だ。妻と会話しながら何度もそうめんをすするのだが、その音と相まってなんだか非常にそうめんが食べたくなってくる…。看護婦のスカートが短かすぎてパンツが丸見えなのも、そんな演出のひとつなのかもしれない(?)。

     何か妙に構えたり、もったいぶったりすることもなく、淡々と自分たちの正直な表現を見せる…こういう表現はなかなか観たことが無い。そして一見何の変哲も無い舞台だからこそ会話劇の本質が出ているような気がする。無論、何度も申し上げるように私は会話劇の本質など語ることは出来ないのだが…。そんな気にさせる舞台だった。(「CUT IN」所載)
    | 劇評 | 23:43 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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