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☆Alice's Review☆

  タイニイアリスで上演された作品の劇評たち ―Crazy Tea Party―
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HUSTLE MANIA「青青青!!!」 __西村博子
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     あんまりスポーツのこと知らない私が言うことだからアテにはならないが、ラグビーはいちばん垢抜けしない、男臭いスポーツのように思われるのだが、どうだろう。飾り気がないといえば飾り気ないから好感度が低いわけではないが、憧れからほど遠いのは確かである。お世辞にも素敵なデザインとは言えないその横縞の汗っぽいユニホームは、アメリカン・フットボールや野球のそれとちがって太ももの筋肉から下腹の脂肪まですっかり剥き出し。サッカーのユニホームも似たようなものだけれど、泥んこの量が圧倒的にちがう。スマートに走り回るサッカー選手とちがって、ボール抱えて転げたり体こごめて尻をつきだし揉みあったりするからにちがいない。第一ラグビーには、メジャ-リーグだのアジア・カップだのといった陽など全く当らない。渋谷・F・真和作、瀧澤☆孝則演出の「青青青!!!」はそういうラグビーだった、じゃない芝居だった。
     舞台はとある中小企業の、社会人ラグビー部の部室。次々に入って来る部員たちがユニホームを脱いだり下着を替えたり、あんまり見たくもない?男の裸大サービスから始まっていく。太ったのあり痩せたのありまあまあありで、早くも客席のあちこちからクスクス笑いが起こってくる。それから可愛いマネージャーが入部してきて男どもが急に張り切り出したり、近所の餃子屋味好しの、まずい餃子しか作れない二代目が注文やカケ取りにやって来たり、部員の誰かが会社の主任や部の監督に昇進したり期待が外れたり、陽気なガイジンやトップ・リーグから引く手あまたの一流選手がなぜか入部してきたり、社内(部内?)できちゃった結婚が成立したり、バイク事故が起こったり……一見、日常をただ淡々と描いていく――とみせかけて、ところどころにユーモアというのかなあ、何ともいえないとぼけた笑いが仕組まれているのが面白い。たとえば、さっき一流選手と言った青木太陽が姉と亡き父親の話をしていると、三角巾をつけた父親がすっと廊下を滑っていったり、携帯の着メロがそのまま暗転をつなぐ音楽になったり、客席側を部室の窓に見立てて部員たちの首振りと目線で広いグラウンド、ボールの行き交いを見せたり、万年補欠が初めて晴れの試合でボールを蹴ろうとするとき、その内心のたゆたいがとてつもなく長い独白と無言の口あけて声援する見物たちのスローモーションとで表わされたり、である。

     そもそもここはハッツル市という架空の田舎町。彼らはハッツル語という、どこにもなくてどこにもありそうな方言で話す。作の狙いはおそらく、どこにも居なくてどこにも居そうな男たちの、J1だけがラグビーじゃないぞの心意気にあったにちがいない。

     実際芝居の半ばに会社は経営不振で人手に渡り、部員たちは新しい経営者から、広いグラウンドは産業廃棄物の埋め立て地に使う。それまで「4部」すれすれだった部も来年「3部」に昇格すればよし、「5部」に下がろうものなら廃部にするぞと申し渡される。そしてとうとう最後、勝敗のことは私にはよくわからないが、どうやら部の存続をかけた試合は負け込んでしまったみたいだし、グラウンドも半ばは産廃で埋まってしまった。が、にもかかわらず、である。彼らは、トップリーグに移籍していった青山太陽をテレビ観戦、大応援する――というところで芝居は終わるのだ。廃部になろうとグラウンドがなくなろうと決して彼らはラグビーを止めはしないだろうということは、わざわざセリフで言わなくても十分わかる。「J1だけがラグビーじゃない」「廃部になろうとグラウンドがなくなろうと決してラグビーを止めはしないぞ」――「ラグビー」を「芝居」という言葉に換えれば、それはそのままHUSTLE MANIAの決意であった。

     初日そうそう開演前に、階段の行列に向かって「今、いそいで立ち見席を作っていますので、恐れ入りますが少々お待ちください」の声が何べんもかかった。こいつは(青)春から縁起がいい。「青」という字のつく苗字の登場人物が3人いたから「青(ブルー)が三個(スリー)」だったが、そのブルー・スリーはやがて演劇界のブルース・リーとなり、たとえJ5でも引き下がりたくない人々を励ましつづけてくれるに違いないと思った。厳しい現実、真面目な決意を男臭さの大サービスととぼけた笑いで差し出そうとするHUSTLE MANIAの方法はすでに明々白々だから、である。     (2005.03.19)

    | 劇評 | 08:06 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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