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☆Alice's Review☆

  タイニイアリスで上演された作品の劇評たち ―Crazy Tea Party―
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劇団印象「枕闇」__香取英敏
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     ▽偉大なる「のほほんさ」と大いなる「異和感」▽

     周りの演劇愛好者たちからいたく評判のいい「印象」で、主宰鈴木厚人とも知り合いになったので、楽しみに「枕闇」を観た。印象(いんぞう)所見である。

     なかなか印象(これは『いんしょう』)的な役者陣。

     野郎どもは、5人。兄冬朗の加藤伸吾、フランスのフィルム・ノワールで悪漢たちの中を飄々と生き抜くぽん引きみたいな雰囲気をもっている。いい。主人公灯成の竹原じむ、電波少年・懸賞生活の「なすび」を漂白したような、たよりなげで、でもその人柄でうまく生きていけそうな、優しいユルさを漂わせる役者。なんかいい声だして存在感あるのに、今回は大して筋に絡んでこない実力派最所(こないだのポップンマッシュルームチキン野郎、よかったです。観てからしばらくして、いい感じに思い出せる演技でした)。岸宗太郎も前田勝も、なんかチープなのに味わいのある存在感で芝居に映えていた。

     一方、ガールズ5名は、毛夢子の毎陽子は本人のキャラがよいので、ちょとおいとくが(これからもっとみたい人)、華衣子役・山田英美も繭子・斉藤真帆、ミッコ・片方良子、カンナ岩崎千帆、みんなとってもキュートで、なにもわざわざ小劇場にでなくてもティーンズ雑誌のモデルでもやればというぐらいの可愛さ(小劇場を誹謗するつもりも、小劇場女優を中傷するつもりも毛頭ございません)。

     役者に恵まれている。これは主宰鈴木の才能の面目躍如といったところだろう。

     装置も実に考えられ、かつきれい。おしゃれな図書館のイメージが芝居を引き立て、ラストにはステンドガラス風の色彩が背後から浮かびあがるなど、センスがはじけていて、申し分ない。

     ではそれらが合わさった肝心の舞台はというと…。

     うーん。感心しなかったなぁ。

     別に主宰と知り合いだから、悪口が言いづらいという皮相な話ではない。  どう評価するべきか、とまどってしまう舞台だったのだ。  脚本がつまらないわけではない。

     人には頭の中に図書館があって、なにかの拍子に現れた「本の虫」がそれらをどんどん食べていってしまうと、本人から「温感」や「色彩」が失われていってしまう。

    という奇抜というか、平凡でない発想が、ポップでありつつ、興味深いというとてもいい感じなんである。

     でもね。色や温度や触覚が失われていくことに主人公はとまどうんだが、「喪失」ってそんなに緩やかなものだろうか? と観ていて、とても違和感を感じた。齟齬感といってもいいや。「喪失」の「恐怖」や切実さというものが全くない。主人公も「困ったなぁ」ぐらいのダルダルな感じで、周りの女の子たちにきゃーきゃー言われて、関係性の中で自分の状況が好ましからざることを把握してったりする。

     自分のことなのに一大事にとらえられない、この片手落ち感ってなんなんだろう、と観ている間中、悩んだ。そして今も悩んでいる。

     「恐怖」が描かれないので、「葛藤」も現れない。

     すでに本の虫に侵され末期の兄は、「(温感や触覚なんか)なくたって、全く普通に生きていける。この腕時計をつけていれば、温度だって湿度だってわかるんだ。全然こまらない」と実に脳天気なことをおっしゃる。「感覚の鈍磨をテクノロジーで補う現代社会への切り込み」というような安手の文明批評はもちろんないのはいいが、じゃ、なにがいいたいの? ってことになる。

     ひたすら「のほほん」とゆるゆると、”やっぱりこれってちょっとまずいのかなぁ、どうとかした方がいいのかなぁ”、という姿勢の登場人物なのである。うむむむむ。

     本の虫の毎も、途中「私が本を食べるとこの人は温度を失っていく。最後にこの人はどうなっちゃうの?」と悩んだりもするんだが、その悩みも持続せず、うやむやになっていく。

     最後まで灯成を心配し続ける誠意の恋人華衣子だが、その彼女こそすでに最初から温感を…という幕切れは、こちらの頭の中の「?」が最高潮にふくれあがり、「はじめ人間ギャートルズ」のように頭から飛び出した「?」が岩になってバラバラと降り注いでくるような奇妙を体感した。

     芝居のいたるところが、「偉大なるのほほんさ」に充ち満ちているのだ。

     役の動機や行動の必然性がない。なんて時代的なドラマツルギー論でばっさりいけたら楽だろうなぁ。

     そうなのである、ここで、人間の「葛藤」とは、とか。ドラマの本質とは困難とその乗り越えによって生じる、とか、書いちゃう楽さではすまない、良さはあるのだ。そう思わせるものがこの舞台には確かにある。

     もちろん、”今の若い人のセンスは独特ですねぇ”、とかわして、世代論の樹海の中に韜晦していくという、安直なこともしたくない。

     良いのだが、今一つおもしろくないのはなぜかというと、表層部分にキッチュな夾雑物が浮きすぎているからである。鍋に浮かぶ灰汁のように余計なギャグと余計なにぎやかしが多すぎ、それが結局本筋のためになっていないのである。

     何かを失っても、死なないうちはそれでも生き続けて行くのである。そういう残酷さがラストで確かに描かれるはずだった。3分ほども続く、無言の灯成と華衣子のシーン。そこでは実は同じ境遇だった二人が、たとえお互いのぬくもりが感じられなくても、寄り添っていくことは、二人の幸せに通じるかもしれない。というこの作品の肝になるものが感じ取れるクライマックスにならなければいけない場面だった。

     しかし、そこまでのシーンの煩雑さがたたり、かえって無言のやりとりに集中できないところがあった。残念きわまりない。「のほほんさ」に覆い尽くされ、その「乗り越え」の肝心が手渡されないまま終わってしまう。

     ほんとうにもったいない舞台であった。五段階で☆は一つしかあげられない。

    | 劇評 | 10:40 | comments(0) | trackbacks(1) | - | - |









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    舞台写真 [Link]枕闇 (まくらやみ) 劇団印象第10回公演
    ロンドンに戻ってまいりました。 そして、訪日時に舞台美術を担当させていただいた...
    | 魯祐の巻物 | yousakana no makimono | 2008/09/23 1:28 AM |